このごろ思うことなど

ふと思ったこと、思いついたこと、作ってみたものなどについて書いています。

新聞配達エッセイ

去年の夏ごろだと思いますが、仕事から帰ってきて新聞を眺めたら、「新聞配達エッセイ」なるものの募集が目に入りました。ふと、昔の思い出がよみがえってきたので、風呂が沸くまでの間に文章を書いて、メールで投稿しました。その後忘れていましたが、どうやらボツになったようなので、せっかくだからここに掲載します。実話です。

飲んで大学に泊まり、明け方バイクで家に向かった。車どおりのほとんど無い幹線道路を登りきり、下りに入ったとき、バイクが止まってしまった。どんなトラブルだったか、もう覚えていない。ただのガス欠だったかもしれない。薄暗い郊外で、止まったバイクにまたがり、途方に暮れかけた。その時、対向車線を登ってきた白いワゴン車が、中央分離帯の向こうで静かに止まり、運転手が顔を出した。高校の同級生だったやつだ。助かった、と思う前に、こんな時間にこんな所をなぜ、という思いがよぎった。でも思い出した。そう言えば、「新聞配達をしている」と、以前言っていた。やつも大学生だが、現役だったのだ。車に乗り込むと、「もうすぐ終わるから」と言って、配達を続けた。運転席から器用にポストに入れたり、車を降りて数件配って歩いたり、手際よく、淀み無く。後部座席に恐縮して座りながら、なるほど、配るやつがいるから届くのだと、妙に納得したものだった。