このごろ思うことなど

ふと思ったこと、思いついたこと、作ってみたものなどについて書いています。

耳鳴りの治療に補聴器?

3年前に帯状疱疹を患い、幸い完治したのですが、左の耳に耳鳴りが残りました。「キーン」という高い音です。自分で色々な周波数の音を出して聞き比べてみたところ、17kHzぐらいの音が近いと感じました。人間が聞こえる音の上限が20kHz程度といわれていますので、かなり高い音です。子供のころにブラウン管テレビから聞こえた「キーン」という音の音色をちょっと低くして音量を上げたような感じです。音楽を聴いたり、大きな音を聞いているときには耳鳴りは聞こえなくなりますが、そうでないときは基本的にいつも鳴っています。耳鼻科で診てもらったこともありますが、「補聴器つけて治療する方法もあるけど、それほどじゃないでしょ」と言われ、まあ我慢できないほどではないからいいか、となってそれっきり放置していました。

3月4日に、NHKの「ためしてガッテン」で「ついに!耳鳴りが治る」という番組が放送されました。最近画期的な治療法が見つかって効果をあげているというので興味津々で見ていましたが、その治療法が「補聴器をつけること」だというので拍子抜けでした。

その後、3月16日に日本音響学会の春季研究発表会で、「知られざる耳鳴の実態とメカニズム −その2 耳鳴における最近の科学と治療−」というスペシャルセッションが開催されました(講演要旨はこちらの9ページ)。これを聞きに行って分かったことは、「補聴器を使った耳鳴りの治療」には2種類あるということでした。私がかかった耳鼻科医が言及していた「旧手法」とためしてガッテンの「新手法」は、補聴器を使うといっても異なる手法ということです。「旧手法」は、耳鳴り対策のためにノイズのような音を出す機能を備えた補聴器を使うことで、その音にまぎれて耳鳴りが気にならなくする、というようなものだと理解しました。研究発表では、この「旧手法」では、多少気にならなくなる程度の効果はあるものの、耳鳴りそのものが軽減したり消えたりすることはほとんど無いとのことでした。一方「新手法」では、耳鳴りの音量が低減されたり消えたりする効果が、使い始めてから1ヶ月程度で得られるということでした。

では、この「新手法」とは何かというと、要するに「普通の補聴器を補聴器として普通に使う」、ということでした。耳鳴りの症状がある人は、大抵の場合難聴の傾向があるため、聞こえにくくなっている周波数を増幅して音量を上げるように補聴器をフィッティングすると言うのです。でもこれって、難聴の人に普通に補聴器をフィッティングするのと何も変わりません。

どうも腑に落ちません。発表によると、難聴の人の35%は耳鳴りの症状があり、耳鳴りのある人の90%は難聴なのだそうです。つまり、難聴かつ耳鳴り、という人はとても多いはずということです。そうであれば、これまでにも、難聴の人が補聴器をつけたら耳鳴りが良くなった、という事例が沢山あるはずです。にもかかわらず、最近発見された治療法として紹介されているのはなぜなのでしょうか?発表者曰く、「補聴器をつけるにあたって医者が患者に、耳鳴りの仕組みや補聴器の効果を説明するカウンセリングが重要で、ただ補聴器をつければ良いというものではない」とのことなのですが、本当にそれだけで違うものなのでしょうか。

さて、補聴器をためしてみるべきでしょうか?