このごろ思うことなど

ふと思ったこと、思いついたこと、作ってみたものなどについて書いています。

アイアンとアイロンの違い

 もうずいぶん昔の話になるけれど、アメリカの大学からインターンの学生が職場に来ていて、一緒にゴルフに行ったことがありました。日本語も堪能なその学生が、「5番アイロン」とか言うのを聞いて、「えっ、アイアンじゃないの?」と尋ねると、「同じでしょ」と。確かに、アイアン(鉄、鉄製のクラブ)とアイロン(火のし)の語源はどちらも iron です。発音は英語で2通りあるようですが、発音で意味が変わるわけでは無いようです。

 おそらく、アイロンが日本に持ち込まれたとき、「それは何だ」と尋ねられた人が、「アイアンだ」と言わずにたまたま「アイロンだ」と言ったのではないか、と想像します。余談ですが、「トランプ(trump)」というのは英語では「切り札」という意味だとか。昔の日本人が「それは何だ」と尋ねた指先にたまたま「切り札」があったのではないかと。

 さて、アイアンとアイロンのような言葉って、他にもあるのだろうかと気になってきました。元の言語では一つの単語だったものが、異なる複数の外来語として定着した言葉、というようなものです。ダイアモンドとダイヤモンドのように、表記は違うけれど意味は同じというのは除いて、意味も表記も異なる外来語になっているものです。身近なもので考えてみました。

 ガラスとグラスは該当しそうです。英語ではどちらも glass ですが、窓にハマっている板状のガラスと、飲み物を入れるガラスでできた器のグラスに分かれています。アイアン・アイロンの例とは違って、ガラスとグラスに対応する英語の発音があるわけでは無いようです。日本人がカナで書くときにガラスと書いた人とグラスと書いた人がいて、なぜだか表記の違いと意味の違いが結びついたのでしょう。

 では、モバイルとモビールはどうでしょう。英語ではどちらも mobile です。モバイルは、カーナビや携帯電話などが広まって使われるようになった比較的新しい言葉のように思います。移動する、機動性のある、というような意味で mobile の形容詞の意味がこれに相当します。一方モビールは、バランスをとってユラユラ揺れるオブジェのことで、これは mobile の名詞の意味です。辞書を引いてわかったのですが、名詞の mobile は「モビール」と発音して、形容詞の方は、日本語のカナに当てはめると「モービル」「モビール」「モバイル」に近い発音のバリエーションがあるようです。元の言語でも発音と意味に対応があるので、厳密には探している例とはちょっと違うようです。ちなみに、石油会社の「モービル」は Mobil でそもそも違う単語でした。

 カップとコップも該当するだろうと思って辞書を引いてみたのですが、意外にもコップの語源は cup ではなく、ポルトガル語の kop という単語なのだそうです。残念。もっと沢山見つかるかと思ったのですが、意外と思いつきません。多分もっとあるはずなので、思いついたらまた書きます。