このごろ思うことなど

ふと思ったこと、思いついたこと、作ってみたものなどについて書いています。

靴下の穴を繕った

何十年ぶりかで靴下にあいた穴を自分で繕った。

それは、左右非対称、つまり右足用と左足用が決まっている靴下で、私の足にとてもフィットするので、最近気に入って履いていたものだ。左足の親指の先に、直径8ミリぐらいの穴を見つけたとき、普段なら捨ててしまうのだが、繕うことに決めた。

なぜかと言えば、『イノベーション・オブ・ライフ』という本を読んだからだ。著者のクリステンセン教授は、「破壊的イノベーション」でとても著名な人で、これまでに邦訳された5冊の本を全部読んでいた。内容の面白さ、深さもさることながら、行間からにじみ出る筆者の人柄が好きだった。息子の付き合いで書店に入り、このクリステンセン教授の新刊を見つけたとき、どんな内容かなんてあまり考えずに、買うことにした。それは、イノベーションの本というよりは、人生についての本だった。この中で、自身の体験として次のようなエピソードが紹介されていた。子供の頃、靴下に穴があいたとうったえると、母親が繕い方を教えてくれたそうだ。そして、自分で繕った靴下を見て、誇らしく感じたという話だった。私も、子供の頃、自分で靴下の穴を繕っていたことを思い出した。みっともないなんて思わなかった。やっぱり、自分で直したことを誇らしく思っていたように思う。何十年ぶりかで縫った靴下も、子供のときと同じやり方で、縫い目が少し見えてしまうけれど、穴はちゃんと塞がって、また履くことができるようになった。

私のものはもとより、子供たちの靴下も、穴があいたら捨てていた。直して履くのは「みっともない」からだ。もったいないことをしてきたかもしれない。靴下が、では無く、クリステンセン教授や私のような体験を子供たちにさせてこなかったことが。